2025年03月29日

パーソナリティ障害について簡単解説

.まずパーソナリティとは、日本語に訳すなら「人格」や「性格」が近いですが、その人に比較的固定した、物事の捉え方、思考および行動のパターンを意味します。それらは、その人の年齢や、その人が所属する社会や文化の捉え方からすると、かなり異なるような「歪み」や「偏り」があり、こうした「歪み」が文化の許容範囲を超えて柔軟性がなく極端な形であり、その人の認知、思考、行動パターンが長期間にわたりさまざまな対人関係場面において広範囲にみられるとき、そのパーソナリティは障害されていると考えます。
つまり、パーソナリティ障害の人の認知や感情、行動や対人関係のパターンは、一般的な、ごく自然に社会性ある行動を取りスムーズな関係性を構築できる人々とは著しく異なるのです。
パーソナリティ障害の人は、他者との対人関係で、そういった「歪み」や「偏り」あるいは「稚拙さ」でもって関わるので、周りの人たちは振り回されたり、時には呆れたり、あるいは怖くなったりするため、望ましい関係性が築きにくく、また築けたとしても直ぐに壊れたりします。
しかしながら、パーソナリティ障害とは、持続的な内的体験および行動の有り方なので、その有り方はある程度の期間を経過しないと確認されにくいものです。
また、パーソナリティ障害の人は、パーソナリティ障害そのものに悩んで医療機関を受診したり心理療法を求めたりすることは殆どないと言って良いでしょう。むしろ以下のような症状から、受診や来談に至ることが多いと思われます。
 1)精神症状:抑うつ、不安、パニック発作、希死念慮、不眠など。
 2)行動面の異常:自傷や自殺企図、摂食障害や物質依存、引きこもりや非行など。
 3)対人トラブル:異性関係のトラブル、上司部下間でのトラブル、ママ友トラブルなど。
 というような、自分が置かれた状況に困っての受診・相談がほとんどです。
医師や心理士が診察・面接する場合には、他の精神疾患と似た症状があったり、異常行動と言っても薬物等に    よる場合もあったりするので、慎重な鑑別、アセスメントが重要となります。

.パーソナリティ障害には10のタイプがあり、症状の特徴に基づいて次の3つのグループに分類されます。

A群(奇異な・偏執的な行動が特徴)
 •妄想性パーソナリティ障害(Paranoid Personality Disorder): 他人を疑い、裏切られることを強く恐れる。
 •スキゾイドパーソナリティ障害(Schizoid Personality Disorder ): 社会的な関わりを避け孤立しがちで、 奇    妙な思考や行動を示すことがある。
 •統合失調症型パーソナリティ障害(Schizotypal Personality Disorder): 他人との接触を避け、冷淡で感情表現     が乏しい。

B群(感情的・衝動的な行動が特徴)
 •境界性パーソナリティ障害(Borderline Personality Disorder): 激しい感情の起伏や自己像の不安定さ、人間関係での極端な反応が見られる。       
 •反社会的パーソナリティ障害(Antisocial Personality disorder): 他人の権利を無視したり、法を破ったりする行動が特徴的。
 •自己愛性パーソナリティ障害(Narcissistic Personality Disorder): 自分に対する過度な自信や優越感、他人の感情を無視して自己中心的な行動を取る。
 •演技性パーソナリティ障害(Histrionic Personality Disorder): 注目を浴びたがる欲求が強く、感情的な過剰反応を示す。

 C群(不安や恐れに関連する行動が特徴)
 •回避性パーソナリティ障害(Avoidant Personality Disorder): 批判や拒絶を恐れて社会的な関わりを避ける。
 •依存性パーソナリティ障害(Dependent Personality Disorder): 自立することが難しく、他人に依存しがち。分離に対する不安が強く、過剰な依存心でしがみつく。
 •強迫性パーソナリティ障害(Obsessive-Compulsive Personality Disorder): 完璧を追求し、ルールや秩序に厳格すぎる。

.治療方法:
パーソナリティ障害の治療には、カウンセリング(心理療法)や、必要に応じて薬物療法が用いられることがあります。治療は時間がかかることもありますが、適切な支援を受けることで、改善の兆しを見せることができます。もし自分や周囲の人がパーソナリティ障害の疑いがある場合は、専門家に相談することが重要です。