病院の受診か、心理相談のカウンセリングかで迷います。

利用者の方からつぎのような迷いや質問をよく耳にします。「心療内科や精神科に行くべきなのか、カウンセリングを求めて心理相談を受けるべきなのか、その違いが分からず迷ってしまう。どう違うのですか」。

心療内科や精神科のクリニックや病院は、医学的治療をおこなう医療機関です。心理の専門家である私どもは、心理テストやカウンセリングを専門とする相談機関です。

お医者さんは医学的に病気を治す人で、症状を診断し、薬を出したりアドバイスをくださったりします。それはそれで大切です。でも対人的な不安やこころの課題が大きい場合、それだけでは不十分なので、京都心理臨床研究所では、医療的対応はクリニックや病院で受けて頂き、こちらでは専門性にうらづけられたカウンセリングを行うといった、両輪のスタイルをとることが多いです。

身体やこころの調子がよくない方、日々の暮らしがつらくなっている方の原因や理由はさまざまです。例えば不安が強くて眠れない人には、お医者さんは睡眠薬や不安をゆるめる薬を出してくださるでしょう。そして数か月の服薬で薬が効いてくれば、「ああ楽になった」、「受診して良かった」と、病気は遠ざかります。

でも、いつまで薬を飲み続けても、ストレスのもとが大きすぎる人や、つねに対人関係のつらさがつきまとう人などは、なかなかそれだけでは改善がみられません。もとにある問題の解決にむけたカウンセリング作業をしないと、根本解決にならないからです。

ですから、医療か心理かという選択方法よりも、医療と心理の役割を知って相談先を選ばれるのが良いでしょう。京都心理臨床研究所では、そうした迷いについても、また医療へのご紹介もふくめて、何からでもお話をうかがいます。先ずはお金のかからないお電話で、気軽にご相談ください。

ひきこもりから立ち直り、大学で個性を発揮するようになったAさん

当時中学3年生の男子Aさんは、友人関係の問題がきっかけで学校に行くのが辛くなり、家にひきこもるようになりました。お母さんは心配して学校に相談しましたが、「不登校は誰にでも起こりうること。しばらく見守りましょう」と言われ、毎朝お弁当は作るものの登校への無理強いはしませんでした。しかし毎日自分の部屋でゲームをしている我が子を見ると不安でたまらなくなり、ある日お母さんは、一念発起して当研究所にやってきました。

最初はお母さんだけの面接で助言指導を行いましたが、暫くすると本人の心が動き、Aさんとのカウンセリングに切り替わりました。

Aさんは幼稚園の頃も登園渋りがあったなど分離不安が高く、人との関りにも緊張が伴いがちでした。
私とAさんの面接関係が続くなか、学校は不登校のままでしたが、時々担任が家庭訪問をしてくれ、Aさんは何とか単位制高校に進みました。

在校時間が少ない単位制高校の生活は時間にゆとりがあったので、Aさんと私の間で、アルバイトにチャレンジするという話が持ち上がりました。そしてAさんは週に何時間かのアルバイトを始めました。そしてそのうち、Aさんは自分のアルバイト料で面接料金を支払うようになりました。しかしながら、対人的に未熟なAさんにはアルバイト先での苦労が多く、カウンセリングの度に愚痴をこぼしたり私に泣きついたりしました。それでも辞めずに学業とアルバイトを両立させたAさんは、面接開始から4年目、希望の大学に合格しました。
大学で彼の個性が発揮されるようになると、次第に友達もでき、カウンセリングは終わりました。その後は充実した楽しい大学生活が順調に展開していったとのことです。

ご自身を理解し、新たな一歩を踏み出したBさん

30代後半の女性Bさんの主訴は、仕事では頑張っているものの、夫や親族との関係が上手く行かないことでした。

Bさんは自分自身のあり方に問題があるのかもと思い、カウンセリングを受けに当研究所を訪れました。

事務職のBさんは、手早くて間違いが少ないので職場の信頼は高いようでしたが、私の前の彼女は常に緊張し、くつろげない印象がありました。
さらに仕事も家事も手を抜かない主義というBさんを、私は人に頼ることが苦手な人かなと考えました。

面接が始まりしばらく経ったとき「人に思い切ったことを言いづらい。ちょっとでも言い過ぎたと思うと、どうしようってひどくさいなまれる」と語るBさんに、「それなら私にも未だに本心を伝えにくいのですね」と返すと、「そうですね‥。どこまで話そうかとか、こんなこと言ったら嫌がられないかとか、心配しながら話してますね」と苦笑しました。

ある時私が、「あなたの躊躇は、まるで舟に乗ろうとしてもその舟が引っくり返らないか、ヒビがあって沈没しないかと怖がっているのと同じみたいですね」と言うと、「誰に対してもそう‥。夫に対してもそうかも。自分の全てを預けるなんて危険過ぎると思ってる‥」とBさん。
やがて彼女は小さい時から母親や祖母の機嫌を損ねないようにとビクビクしていたことを思い出し、そして、「家族が和やかでいられるようにと、子供心にすごく気を遣っていた自分」を振り返るようになりました。

そうした怯えや躊躇、必要以上の気遣いなどについて私と一緒に考えるうちに、Bさんは随分とくつろぎ、どんどん話すようになりました。
そして、「ここで色々話すうちに、自分で背負い込み過ぎては相手が悪いんだ、人のせいで自分はしんどくなるんだと周りを恨んでいたなあって。自分で自分を追い込んでいたんですよね」。
「自分を全部預けられるって何て楽なんでしょう、私って甘え足りなかったんです、きっと」と語り、しばらく後にカウンセリングは終結しました。

うつ状態から、余裕を取り戻したCさん

40代男性のCさんは、妻を病気で亡くし、何に対しても意欲が出ない『うつ状態』になって来所しました。

妻に家事や子育てを任せっ放しで奥さん孝行をする暇もなく先立たれたこと、妻が不満を抱いていたのを知ったことなどから、後悔が募り、自分を責める暗い日々を送っていたのです。
しかし私がCさんの思いをしっかり聴き、悔いの感情をともに味わい、罪悪感に埋没し過ぎている時には指摘するなどといった面接を進めるうち、Cさんは自分を振り返る余裕を持てるようになりました。

そして、社会に貢献できている自分を認めたり、家族のために仕事を頑張ってきたのだと思えたり、妻の不満にも実は色んな要因があって自分だけの責任でもなさそうだと気付いたりして自信を取り戻し、自分を責め過ぎていたかも知れないと捉えられるようになると、落ち込みや不安感が軽減されていきました。
そして、職場や子供たちなど周囲にも目を向ける余裕が出てきました。

そうこうするうちに、「夜1人で居ても結構平気になり、生活を楽しめている自分にも驚いている」と語り、まもなく「一人でやってみます」と、面接を終了しました。

※ご本人様のご了承を得て掲載しております。